ポータブルレコーダ考

このところ各社から続々と出ている、ポータブルレコーダー。実際には以下の他にもあるんですが、本体にマイクが内蔵されていて、入手が比較的簡単。実売価格が2万?5万円程度程度のものに絞って検討してみました。 演奏家向けポータブルレコーダーに先鞭をつけた感のある Edirol R-09(以下R-09)

 

実際、現時点で僕の周囲では圧倒的なシェアです。

少し大きいけれど、本格的なマイクが直接つなげる Zoom H4(以下H4)

同じメーカーで、コンセプトがR-09寄りの Zoom H2(以下H2)

当初20万円クラスの超高級機種を出していて、その後廉価版が出た Sony PCM-D50(以下D50)

オーディオメーカーが出した、R-09対抗(?)ポータブルレコーダー Kenwood MGR-A7(以下A7)

ボイスレコーダーからの進化で、音楽録音向けに作られた Olympus LS-10(以下LS-10)

業務用オーディオ機器を出しているメーカーが出した TASCAM DR-1(以下DR-1)

他にもいろいろ出ているようですが、とりあえず今回はこれだけを対象とします。

今回は、これらの機種をアマチュアオーケストラの演奏者が普段の練習で使うという視点から考えてみたいと思います。(本格的なレコーディングという観点での評価は割愛します)

 ※あくまで私個人の主観による評価です。実際に使ったことがあるのは、R-09、H4のみで、その他の機種は、店頭で触った程度です。また、憶測・サポート外となる可能性がある情報が含まれておりますので、この評価をご参考にされる方は自己責任でお願いいたします。

【デザイン】
 あくまで主観ですが・・・ 
  R-09はとても無難にまとまっています。どこに持って行ってもそんなに目立たないデザインです。
  Zoomのははっきり言ってカッコ悪いです。外見も手触りチープな感じ。
  D50はさすがにSONY、重厚感もあり(実際に重い)、所有欲を満足させる質感です。
  A7は、最近の若者向けのオーディオプレイヤーといった趣。この中で一番小さいですが、質感は比較的高いといえます。
  TASCAMのものはサイトの絵を見ると微妙にR-09っぽいですが、実物を触ってみると「業務用メーカーが一般の人向けのものを作ったらこうなる」という感じのどちらかといえばシンプルなデザイン。一言でいえば「ハコ」っぽいです。

【サイズ】
  R-09 63mm×102mm×29mm 145g
  H4 70mm×152.7mm×35mm 190g(電池含まず)
  H2 63.5mm×110mm×32mm 110g(電池含まず)
  D50 72.0×154.5×32.7mm 365g(電池含む)
  A7 52.7mm×100mm×18mm 95g
  LS-10 131.5mm×48mm×22.4mm 165g(アルカリ電池2本含む)
  DR-1 70.0×27.0×135.3mm 208g(リチウムイオン電池を含む)
 ざっと分けて、「H4、DR-1、D50」「R-09、H2、A7」がそれぞれ同クラス。
 LS-10は、どちらかといえば後者のグループだけれど、長さだけ前者並です。
 収納能力の低い楽器ケースだと、サイズが小さいのは魅力ですね。
 この点では、A7、H2、R-09あたりに軍配が上がります。

【録音メディア】
 ここで出したものはほとんどSDカード・SDHCカード対応ですので、入手性・価格で問題になることはほとんどないでしょう。
 D50だけはさすがSONY、メモリースティックHG-DUOなので、同じ容量だと少し割高になります。
 ただし、D50は4GB、LS-10、A7は2GBの内蔵メモリがあるので、これらの機種は万一メディアを入れ忘れても大丈夫というメリットがあります。

【電池】
 電池の問題はかなり重要です。
 もちろん、長時間連続して録音できるということもありますが、 うっかり充電を忘れてしまったときに録音できないというのは悲しいものです。
 というわけで、緊急時にコンビニで電池が購入できるものが便利です。
 単三電池2本で駆動できるのは、R-09(4時間)、H4(4時間)、H2(4時間)、LS-10(12時間) ※()内はアルカリ乾電池での録音時間(公称値)
 単三電池4本で駆動できるのは、D50(24時間)
 専用充電池による駆動なのは、DR-1(7時間)
 内蔵電池による駆動なのは、A7(12.5時間)
 A7とDR-1は、この点がちょっと残念ですね。DR-1の場合一応予備電池も発売予定ですが、単三電池のメリットにはかないません。 ただし、双方ともACアダプタの端子は普通の5V・極性統一型だったので、PSPが使えると謳っているバッテリー類で充電できそうに思います。
 ※あくまで憶測です。実際に実行して何か起こった場合サポート外となる可能性がありますので、くれぐれもご利用は自己責任でお願いいたします。
 H2,H4は、9VのACアダプタを使用するため、USB系のバッテリーでは対応できないのが残念です。
 D50は大きくてかさばりますが、単三4本で24時間の長時間駆動というのはちょっと魅力的です。
 また、D50のACアダプタも極性統一型ですが、6Vという定格のため、USB系のバッテリーは避けておいた方が無難かもしれません。
 もっとも、乾電池で24時間駆動してくれれば外部バッテリーは必要ないとも言えます。

【長時間録音】
 通常、どの製品でも最低2時間くらいは連続録音できますので、自分の練習を録音する程度であればそれほど気にすることはありません。
 合奏等を録音する場合、2時間以上休憩なしということがあったりしますので、そういう場合のみ注意が必要です。
 R-09は、自動的に2GBごとにファイルが分割され、録音が継続されます。
 H2,H4はファイルサイズが2GBに達すると、自動的に録音停止・録音再開が行われます。停止-再開の間の数秒間は音が入りません。なので、MP3などであれば分割される心配はほとんどないといえます。
  ※初期型のH4は、非公式で条件付きながら4GBまで録音が継続されたのですが、SDHCに対応した最新ファームウェアでは上記仕様に変更されています。
 A7の場合、2GBではなく2時間ごとに録音停止・再開がおこわなれます。MP3などでも同様に2時間で切られてしまうらしいので合奏録音に使うのは厳しいかもしれません。
 ※今回のコンセプトでは関係ないので、ここでは詳しくは触れませんが、本格的に高音質で録音しようとすると、ファイルサイズが大きくなったときに
  機種によっていろいろな問題がでてくるので注意が必要になってきます。

【音質】
 ネットでの評判などを聞くと、R-09はノイズが多いなどと言われますが、私は同じ環境で比較していないのではっきりしたことは言えません。
 ただ、実際にノイズが大きいのかもしれませんが、少なくとも「練習を録音して自分のアラさがし」をする程度なら十二分の性能を持っています。
 H4に関しても細かいことを言うと、CDと同じ44.1kHzで録音する際に、実は正確な44.1kHzではないという問題があったりしますが、カジュアルな使い方であればほとんど問題になりません。
 D50,DR-1,A7,LS-10は店頭でちょっと録音してみた程度なので、参考程度に・・・。家電店の店頭は環境ノイズが非常に多い環境なので、あまり参考にはなりませんが、自分の練習を録音して聞く程度であればどれもそれなりの性能を持っていると感じました。
 ただ、A7に関しては、「オートレベル録音」(機械が適当にボリュームを調整してくれる)で録音すると、左右のボリュームを独立で調節するらしく、 オーケストラなどの録音をしようとすると、聞いたときに左右のボリュームが不安定に変わり、気持ち悪い音になる危険性があるようです。(バグではなく仕様らしい)  ですので、A7で練習録音をするならマニュアルで音量調整をしないといけないようです。

【操作性】
 これに関しては、使っている製品しか評価できません。
 H4は、ちょっとメニューやボタンの使い方に癖があり慣れが必要です。(慣れてしまえばそんなものですが・・・)
 また、マイクの音量切り替えだけや電源スイッチがスライドスイッチとなっているため、ポーチのようなもので保護しておかないとカバンの中で勝手に電源が入ってしまい、電池を消耗してしまうことがあります。
 この点は「ボタン長押し」で電源が入る機種と比べると欠点と言えるでしょう。
 録音ボリュームの調整などは、おそらく機種ごとにかなり違うと思いますので、このあたりは店頭で納得のいくまでいじってみることをお勧めします。

【設置方法】
 すべての製品は、机の上に「ポン」と置いて使うことができます。
 基本的に「お気楽録音」という意味ではそういう用途が一般的だと思います。
 また、他の製品はほとんど、「水平に置いたら水平方向の音を録る。」つまり、長辺方向の音を録るようになっているのに対し、 H2は、「垂直に置いたら水平方向の音を録る。」つまり、立てた状態で正面(実際には背後の音も録れますここれは詳しく触れません)の音を取るようになっています。そのために、本体を立てるスタンドも標準装備です。
 また、DR-1は、マイクの向きを水平?垂直まで90度回転することができるので、そのどちらのパターンも、中間で止めることもできます。マイクの向きによって、録れる音というのはずいぶん変わるので、凝ってみたくなったときにやや自由度が高いと言えるでしょう。
 きちんとスタンドなどにつけたい場合、多くの製品がカメラ三脚を使うことを想定しています。
 ・H2,D50,LS-10は、本体に三脚穴が付いています。
 ・H4は、標準でカメラ三脚用のアダプタがついてきています。
  ちなみに私は旅行用の8段三脚とセットで持ち歩いています。
 ・R-09は、別売りで、革(風?)カバーがあり、それをつけるとカメラの三脚につけられるようになります。
  さらに、マイクスタンド用オプションを購入すると、マイクスタンドにもつけられるようになります。
 ・DR-1は、三脚用ホルダがオプションで発売予定だそうです。
 準備・片づけはひと手間余計にかかりますが、三脚に設置したほうがテーブルの上に置くよりも(一般的には)いい音で録れます。 【価格】 これも結構重要ですね。
 最安値ベースで考えると、H2は別格の安さで約2万円強、H4がそれに次いで2万5千円程度、DR-1が3万円を少し切る程度、 R-09,A7が3万円台前半、LS-10が4万円台前半、D50が約5万円です。
 A7,D50,LS-10は内蔵メモリが十分ありますし、H4,H2は512MB、DR-1は1GBのカードが付いているので、MP3であれば購入状態でそれなりに録音ができますが、 R-09は付属が64MBとちょっと心もとないので、実際にはメディアの値段も考え、数千円プラスと考えるとR-09のほうがやや高めでしょうか。
 DR-1は、さしあたってH4寄りの財布にやさしい価格設定と言えるでしょう。
 ただ、DR-1はUSB充電が標準で、ACアダプタが別売りになるので、PCを日常的に使っている人以外の場合ACアダプタ(3,000円程度)を購入する必要が出てきて、結局R-09と似たような価格帯になってしまいます。
 ※長らくR-09は3万円台後半が相場だったのですが、(おそらくライバルの価格を意識してのことと思いますが)つい最近3万円台前半まで下がったようなので、今から買う人には値ごろ感が高くなっています。

【入出力端子】
 演奏者によるお手軽練習録音という意味ではあまり関係ないので詳しくは書きませんが、 ほとんどの製品は、普通に電気屋さんなどで売っている1万円程度までの録音用マイク(プラグインパワーと書いてあるもの)を使えるようになっています。
 しかし、H4のみは録音を趣味や職業としている人が使うような本格的なマイクが使えるようになっていて、プラグインパワーのマイクは使えません。
 もっとも、今回の評価はあくまで練習用のお手軽録音がテーマなので、気にしなくて良いでしょう。

【その他】
 LS-10は、小型ながらスピーカーがついているので、録音した音をその場で確認できます。少人数のアンサンブルなどで「演奏」?「確認」を繰り返すような場合便利といえるでしょう。
 音量はそれほど大きくないとは思いますが・・・(実際に試したわけではないので、カタログスペックからの憶測です。)
 H2,H4にはチューナー機能・メトロノーム機能がありますが、「試しに」以外には使ったことがありません。
 普通のチューナーより操作が煩雑で、普通のメトロノームよりも画面が見にくいので、あまり使う気がしません。
 ただ、適材適所というか、ギターなどの人には割と好評なようです。
 H2は、面白い機能として、4チャンネルの録音ができます。これは、前の左右・後ろの左右の音を録音し、立体音響を録音することができる機能です。
 オケの自分のパートのあたりに置いておけば、ほかの楽器のバランスが普段通りに聞けて面白いかもしれません。
 (再生装置も4チャンネルのスピーカーがないといけないので、そっちの方の敷居が高いですが・・・)
 H4は、同時録音は2チャンネルですが、簡易MTRとして使えます。たとえば自分ひとりで複数の楽器を弾いて、重ねて録音して1曲を仕上げるということができます。
 バンドをやっている人の場合、こういったもので作品を作る人も少なくありませんが、アマチュアのクラシック畑の人には通常縁がない機能といえるでしょう。
 DR-1には、演奏家向けに特筆すべき機能があります。それは、「可変速再生」です。 これは、録音した内容を、音程を変えずに-50%?+16%まで速度を変えて再生できる機能で、 「録音したものをゆっくり再生して指の練習をしたい」 ような場合に非常に便利です。
 ※実はこの機能、TASCAMから既に出ているCDプレイヤーに搭載されていて、私もそれを使っているんですが非常に有効です。
  CDをゆっくり再生してさらったり、合奏の録音をゆっくり再生しながら合わせたり、そういう練習ができるんです。
 この製品ならCDプレイヤーよりコンパクトですし、いちいちCD-Rを焼かなくてもいいし、個人的にはそのためだけに買ってもいいと思うような機能です。
 また、DR-1には、H2,H4と同様チューナー・メトロノームが付いているそうです。H2,H4よりは画面が大きい分使いやすいかもしれませんね。

というわけで、私の結論です。
1.普段から楽器ケースに入れておくなら、イチオシ:LS-10

 今回のリストの中では高価な部類ですが、乾電池で駆動、しかも単三電池2本で12時間の長時間駆動は魅力的です。
 また、手にもった質感もそれほど悪くはありませんでした。サイズはR-09などより大きいですが、厚さと幅はそれほど変わらないので、楽器ケースに放り込んでおいてもあまり邪魔にならないと思います。
 また、仮にSDカードを忘れても内蔵メモリで録音できることも評価のポイントです。
 さらに、もともとボイスレコーダーから進化した製品ということもあって機械に強い人でなくてもそれなりに使えるような操作性になっている点や、小型ながらスピーカーを内蔵しているので、少人数であればその場で聞くことができるのも嬉しいですね。
 また、三脚穴もありますので、合奏録音にも十分対応できるでしょう。
 リニアPCMで録音する場合、ファイルサイズ2GBで録音が停止するため、CD音質で約3時間以上連続して録音することはできません。
 僕のように練習録音をリニアPCMで録る人は少数派だと思いますし、MP3の場合4GBまで連続録音でき、大容量のSDHCカードを使い(電池さえ持てば)最高音質の320kbpsでも約28時間連続録音できますので、通常ほとんど問題にならないと思います。
 音質については、一度静かな環境で比較録音して評価したいところですが、まぁ最低限音程とニュアンスの確認には十分な性能を持っていると信じましょう。
 ※ちなみにこの製品、96kHz/24bitという、CDよりも情報量が多い録音フォーマットが選べるのですが、その点は今回のコンセプトでは「オーバースペック」として評価対象にはしていません。(H4、D50も同様)

 次点:R-09

 定番ですが、大きさと機能のバランスが非常によく取れているところに持ってきて、価格改定があったことが決め手です。
 改定前の価格だと、メモリカード代を考えるとLS-10と同程度になってしまいますので、ちょっと不利になります。
 メディア・電池の出し入れをするフタの構造にクセがあるので、その点は少し慣れが必要です。
 あと、個人練習だけでなくオーケストラ合奏全体の録音をするとなると専用ジャケットが欲しくなり、結局LS-10と大差ない出費になってしまうでしょう。
 LS-10にないメリットとしては、リニアPCMでサイズが2GBを超えてもファイルを分割して録音を続けられる点がありますが、今回のコンセプトではあまり関係ありません。

2.反復練習を重視したいなら
 これは圧倒的にDR-1

 電源の問題はあるものの、可変速再生の魅力は非常に大きいです。
 ただし、標準では充電はUSBケーブル経由なので、パソコンを持っていないと話になりません。
 パソコンがない場合、ACアダプタを別途購入することになりますが、その場合3,000円程度余計にかかります。
 「ACアダプタを使える練習場所がメイン」「自宅で置きっぱなし」というシーンでの利用であればかなり有効なアイテムだと言えそうです。
 もし僕がこれを購入したら、無保証を覚悟で外付けのUSB給電バッテリーとPSP用充電コードを一緒に持ち歩くと思います。
 ・・・ただ、そうなるとやはり小型でそれなりの音量が出るスピーカーが欲しくなりそうで、全体としては荷物が大きくなってしまい本末転倒という気がしないでもないですが(笑)

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